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新語は柔軟に受け入れつつ言葉の使い方には気を配る。そうした風潮が見えてきた。
広がるSNS(交流サイト)など言葉を取り巻く環境は大きく変化している。文化や心のよりどころとなる日本語を大切にしながら未来につなぎたい。
文化庁が16歳以上を対象にした令和4年度の「国語に関する世論調査」を発表した。
「引く」を「異様だと感じてあきれる」という意味で使うかどうかを聞くと、70%が「使うことがある」と答えた。「より良く見せる」という意味の「盛る」も53・3%、気に入っている人や物を指す「推し」は49・8%だった。
いずれも既存の言葉で、新しい意味や使い方が辞書に載るようになったものだ。
興味深いのは、「他の人が使うのが気になるか」と聞いたところ、いずれも全体の8割以上の人が「気にならない」と答えたことである。テレビやインターネットなど多様なメディアを通じ触れる機会が増えているからだろう。
一方で注目したいのが、国語への意識だ。普段「言葉の使い方に気を使っている」とした人は全体の8割を超えた。世代間でその割合に大きな差はなかった。内容を聞くと、「改まった場で、ふさわしい言葉遣いをする」「敬語を適切に使う」「差別や嫌がらせ(ハラスメント)と受け取られかねない発言をしない」の順に高かった。
敬語や丁寧語を場や相手を尊重して使い分ける日本語の豊かな特性が根付いている証拠だ。ハラスメント問題や、ネット上での発言がときに摩擦を生むことへの警戒心もうかがえた。
「日本語を大切にしているか」との問いには、62・2%が「大切にしている」と答えた。理由は「日本語によってものを考えたり感じたり善悪の判断をしたりしていると思うから」が52・9%、「日本の文化そのものであり、文化全体を支えるものだから」が45%と続いた。
AED(自動体外式除細動器)やSNSなど、アルファベットの略語については、85・1%が「意味が分からず困ることがある」とした。慣れもある。さまざまな機会を通じ、覚えてもらう努力が必要だろう。
言葉は生き物だ。枝葉は伸びるが、幹は揺らがない。そんな日本語を大切にしたい。
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2023年10月5日付産経新聞【主張】を転載しています